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芦屋浜 ─ 松林のランドスケープ

芦屋川河口

吉原治良《鯔とチューリップ》1928年、油彩、布、芦屋市立美術博物館蔵

吉原治良と同時代の画家、長谷川三郎と福井市郎はともに《芦屋浜風景》(前者1906年、後者1933年)と題した作品を残している。吉原自身の《鯔とチューリップ》(1928年)には紀淡海峡を思わせる山並みがみられ、吉原が兄事していた画家、上山二郎の自宅から芦屋浜の眺望を描いた可能性があるといわれている。フランス帰りの上山は長谷川や吉原に影響を与え、吉原に藤田嗣治を紹介した人物でもあった。また福井は芦屋川河口西側の自宅の庭を使って、林間洋画展(1922年)を開催している。吉原が福井の林間洋画展を見ていた可能性は高く、後の野外展の着想源のひとつとなったかもしれない。

埋め立てにより失われてしまったが、「具体」の野外展の舞台となった芦屋公園の先には白砂青松とうたわれた芦屋浜が広がっていた。当時の名残は、芦屋公園の松林と芦屋川河口にわずかに残された砂浜にみることができる。

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