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寶がある ― 摩耶山の夜景と抽象絵画

神戸市灘区、東灘区

元永定正《寶がある》1954年頃
©Motonaga Archive Research Institution Ltd.

1952年、元永定正は郷里の伊賀上野を出て、神戸市の魚崎にいた弟のもとに身を寄せる。魚崎からみえる六甲山や摩耶山の夜景は、頂上付近に色とりどりの照明が灯り、夜になると闇に沈む故郷の山並みとはまったく異なって見えた。やがて芦屋市展に出品した際、作品の多くが抽象画であることに衝撃を受け、自身も抽象表現を模索する。そこで生まれたのが摩耶山稜線の有機的なフォルムと、山上の照明をカラフルな点で表現した《寶がある》(1954年頃)である。同作は、元永が「具体」に加入する同時期に開催された第8回芦屋市展(1955年)でホルベイン賞を受賞し、引き続き第1回具体美術展(同年)にも出品されている。自然由来のフォルムをユーモラスに抽象化し、色彩豊かに表現した本作は、元永流抽象表現の原点といえる。

 

 

関連場所

旧元永邸 神戸市東灘区

摩耶山頂 神戸市灘区摩耶山

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